vol.64 2021年 STORE OF THE FUTURE ”リテールテイメント“に勝算あり! 

ここ数年、リテールマーケティングの成功のカギと言われてきた購買体験。商品よりも、体験にお金を使うことを好むミレニアル世代の購買傾向を背景に、実店舗、そしてオンラインストアは、消費者を惹きつけ、ブランドファンを増やし、売上を向上させるために、リテール+エンターテイメントに取り組んできた。

例えば、Amazonはライブビデオショッピングのプラットフォームを利用して、Amazon Liveというサービスを導入し、販売者と視聴者がチャットで対話できる仕組みを提供しはじめたし、実店舗では、化粧品メーカーのL’OCCITANE(ロクシタン)が、来店客に“ブランドを体験してもらう”というコンセプトのもと、バーチャルリアリティを利用して熱気球や自転車でフランスの田舎町を巡る疑似体験コーナーを店舗内に設置して、話題になった。

そして、2020年、新型コロナウイルス感染の拡大により、実店舗での買い物は制限され、オンライン市場がこれまで以上に激戦区と化した中、日本では、『こんな時期だからマーケティング費用は大幅に削減するべき』という方針を打ち出した企業が多くあった、という印象だが、アメリカ小売市場では、『こんな時期だからこそ、マーケティングを強化して、実店舗の売上減を回復させなければいけない!』、『成長著しく(グラフ:オンライン販売の成長参照)、激戦区と化したオンラインショッピング市場で勝つためには、デジタルマーケティングを一層強化しなければならない』と考えた多くの小売企業が、これまで以上に工夫を凝らし、リテールテイメントに取り組んだのである。

そこで今回は、2020年のコロナ禍の中で、アメリカ小売企業、ブランドがどのようなリテールテイメントに取り組んだのか、事例をあげて紹介する。2021年もコロナ禍の影響は続き、マーケティングを強化した企業と、そうでない企業の差は、さらに大きく開くことになると推測されている。この事例が2021年新年度のマーケティング戦略立案において、何かの参考になれば幸いに思う。

2020年5月、コロナ禍の中、Walmartが実施した母の日プロモーションは、車に乗って同社の駐車場に向かうと、そこにはショーウィンドーの替わりにショーテントが用意され、様々なフリーサンプルがもらえるという、ドライブスルー形式で行われた。

このイベントは、同社の本社ベントンビルのすぐそばの街、アーカンソー州ロージャスのストアで開催された。

ショーテントには、この夏の新しいファッションスタイルをテーマにしたディスプレイが用意され、車両からは、QRコードを読み取ることで、最新のファッションカタログや、母の日のための特別レシピ情報が取得できる工夫も施され、参加型のイベントをドライブスルーという方法で実現させたのである。

ショーテントを過ぎると、同社のスタッフが、Merciチョコレート、Aveenoボディウォッシュ、Ahaスパークリングウォーター、Hallmarkグリーティングカードなどの無料サンプル、そして各商品の詳細情報が掲載されているパンフレットが入ったバッグに、花を添えて、少し距離をおいた場所からトレイにのせて渡すことで、感染予防にも努めたという。このイベントの参加者の一人は、「こんな状況の中で、母の日を祝ってくれるイベントに参加できてとてもうれしいです。また、私たちのために、イベントを開催してくれたWalmartに心から感謝しています」とコメントしている。

次に、Walmartは、家族で過ごす”夏の思い出体験“を提供したい、と仮想サマーキャンプと、駐車場に屋外のドライブインシアターを企画した。7月8日に始まった仮想サマーキャンプでは、200を超える無料のアクティビティプログラムが用意され、有名人や専門家たちがスクリーンに登場して、歌のレッスンやアートやクラフトのクラスを指導して子供たちを楽しませた。キャンプには、Walmartアプリをダウンロードするだけで参加することができる仕組みとなっていた。

ドライブインシアターは、8月から10月までの期間、合計で160のWalmart店舗駐車場に設置され、映画製作者や有名人が会場に登場するスペシャル企画も用意され、合計320回上映された。参加者は、事前にチケットをオンラインで購入、また、ドライブインシアターに向かう前には、事前にWalmartオンラインで注文したスナックや軽食、ドリンクを受け取れるサービスも用意されていたという。

高級ヨーロッパブランドのGucciが、2020年夏に実施したキャンペーン「Try-on(トライオン)」は、スマートフォン向けの写真共有アプリ、スナップチャットのAR機能を活用したもの。ユーザーは、スナップチャットを起動し、自分自身の足にスマートフォンのカメラをかざし、同ブランドのスニーカーを履いた様子をスクリーンで確認できるようになっていた。また、商品が気に入れば、“SHOP NOW”をクリックするだけでスニーカーを購入することができる仕組みとなっていた。

化粧品メーカーのNYX(ニックスプロフェッショナル・メイクアップ)は、ソーシャルビデオプラットフォームのTriller(トリラ―)を活用した、シンガーソングライターBebe Rexhaによる仮想ライブと、スナップチャットのAR機能を活用した仮想店舗で2021年春のメイクコレクションを購入できる、デジタル複合型のリテールテイメントプロモーションを実施して話題になっている。NYXのゼネラルマネージャーであるステファニービネットは、

Don`t copy text!